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海外ミステリーを読む(その48) [└ミステリー]

ハリイ・ケメルマンの『九マイルは遠すぎる』です。
発表年 1967年 (早川書房)

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ミステリーの醍醐味は、パズルのような謎を解くことにある。
もっとも、ロスマクなどのハードボイルド系やアイリッシュのサスペンス系などの味付けの方を好み、クロフツのような、辛気くさい(ファンの方すみません。。)謎解きは、おことわりという方もいらっしゃるのでしょうが。

謎解きがお好きな方は、分類好きでもあるようです。(私もですが、はは)

で、ミステリーの謎解きは、いくつかに分類(公式というより、通説、一般的、マニアの間ではということですが)されます。

その中で、「安楽椅子探偵〜アームチェアデテクティブ」なるものがあります。

通常(現実世界)の犯罪捜査は、現場検証、証拠、証言集めなどをコツコツして、犯人を特定し、起訴にもっていくわけですが、
この「安楽椅子探偵」は、基本的に地道な捜査をしないで(現場に赴かないで)、聞いた情報と推理のみで、犯人を当てるという、スーパーマン的捜査手法なんですね。

ある意味、推理小説らしい推理小説といえるかもしれません。

すべては、推理によって導かれる訳ですから、日頃からの卓越した観察力と洞察力、また、人間心理や社会のしくみなど、博覧強記な頭脳が必要となります。

さて、この連作短編集 『九マイルは遠すぎる』も、その「安楽椅子探偵」のお話です。

主人公は、ニコラス(ニッキイ)・ウェルト教授。書き手のわたしが聞き手(ワトソン役)となります。

表題作の『九マイルは遠すぎる』がもっとも有名で、知る人ぞ知る名作です。

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」
たったこれだけの文章、英単語にして、わずか、十一語のこの文章を基に、次から次から様々な推論が生まれてくる。

歩いた時間から、どちらへ向かって歩いたか、バスに乗らなかっただの、合図を待っていただの、どこをどうひっくり返したら、そんな推論が出てくるのか。
いささか、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な感もあるけど、なるほど、推論(推理)というものの、楽しさ、奥深さを見事に書いていて感心させられる。

書籍店の棚に、通常よりも早く補充され、しかもスリップのないクロフツの『樽』を巡って(←ある意味くだらないんだけど)、論議を戦わせるという、有栖川氏の短編を思い出して、ミステリー好きって、どんなことでも謎にしてしまう、そして楽しめてしまう。まさに頭脳の格闘技。いいですねえ。

この作品では、最終的に、実際の犯罪捜査へと発展していくわけですが、そこは言わない方が良いですね。

他には、『わらの男』『10時の学者』『エンド・プレイ』『時計を二つ持つ男』『おしゃべり湯沸かし』『ありふれた事件』『梯子の上の男』とあと7作品入っていますが、個人的には、『おしゃべり湯沸かし』がおもしろかったですね。
だって、これは、湯沸かしの音を聞いただけで、事件の全容をあばいちゃうんですもん、しかも、理路整然としている。なるほど、なるほどです。うんうん。


九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

  • 作者: ハリイ・ケメルマン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/07
  • メディア: 文庫



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