『ゲド戦記』 第2巻 [└いろんな本たち]
『ゲド戦記』 第2巻 こわれた腕環
本の帯には「青年ゲド、迷宮で少女と合う」となっています。
少年→青年→壮年→初老→晩年→(外伝)と各巻を位置づけようという、出版社側のシリーズのまとめかたの手法ですが、内容はそれほど単純ではない。
結果的にゲドの年齢とオーバーラップするし、ゲドが主人公であるのは間違いないのですが、各巻で作者の意図する主題は、かなり違うもののように感じられる。
実際には、第一巻を読んでいないと、話の深みが見えない所はありますが、基本的には、第一巻、第二巻はまったく別の物語とみてもさしつかえないと思います。
オムニバスで、娯楽性に富んだ、いかにもファンタジーな物語の第一巻に比べ、ひとりの少女を主人公に、ゲドを脇役に仕立てて、ひとつのエピソードを一冊かけて追いかけていく。
不可思議なダンジョン世界を舞台に、じっくり描いてみせています。
前回の足早さから一転します。
まとめてしまえば、腕環の半片を取りに行くというだけの話。
しかも、その腕環が何か不可思議な事を(具体的に)引き起こすわけでもない、
しかし、このエピソードが実質的には、シリーズ中で最も大きく(大事な)エピソードだと考えていいと思います。第四巻、第五巻へと続く、大きな源泉となっていきます。
派手さ、娯楽性としては、第三巻のエピソードなのでしょう。だから、映画の方も第三巻を核として描かれているようです。
でも、それは、他のファンタジーにもあるおもしろさです。
ゲド戦記のおもしろさは、この第二巻にあるように思えます。
前回は、かなり子ども向けだと思った作品でしたが、今回はちょっと年齢が上がった感じ。少女との恋愛(匂わす程度ながら)も入っているし、やや大人向けに方向修正されてきたように感じる。
真っ暗闇の地下ダンジョンが出てきますが、ギリシャ神話のミノタウロスの迷宮を思い出しました。モンスターなど一匹も出て来ないのに、迷宮を歩くシーンは、どきどきする描写でした。
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