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『ゲド戦記』 第1巻 [└いろんな本たち]

『ゲド戦記』 第1巻

ついに読み始めました。とりあえず、第1巻を読了。
主人公ゲドの少年時代のお話です。

読んでいて、一番に感じた事は、話の進み方がはやいこと。
ひょっとして、2、3ページ飛ばし読みしちゃったんじゃないかと思うくらい、展開がはやいです。

これだけのストーリーを、たとえば、栗本薫さんの「グインサーガ」風に書いたとしたら、たぶん、3冊くらいにはなったでしょうね。
子ども向きのハイファンタジーという性格も関係していると思います。

ただ、だからといって、物足りないというわけではなく、つるつると読んでいける気持ちよさ、楽しさがあります。

物語の中心となる言葉は「真の名前」と「影」ですね。
「真の名前」は魔法を使う上でなくてはならないもの、知らなくてはならないものであり、自然現象を含め森羅万象の根源として表現されています。

また、魔法使いを、なんでもできるスーパーマンではなく、単に魔法という自然の摂理を知って使いこなしているにすぎない、賢者として位置づけられている。

この「名前」や「言葉」というものが、具体的な現象、出来事に影響を持つという思想、世界観は、日本人にもわりとわかりやすいのではないだろうか。

「影」は主人公ゲドの乗り越えるべき試練です。
読まれていない方のために、詳しくは書きませんが、自分で作り出したものに、傷つき、悩み、対峙するというのは、内面的な冒険行を意味し、実際の冒険譚と重ね合わせながら、主人公の成長が描かれていきます。

いくつものエピソードが織り込まれてはいますが、全体としては地味であり、このまんまだと、映画化(アニメ)するのはむつかしいのかなとは思いました。
ただ、本としては、おもしろく、その完成度はかなり高いのではないでしょうか。思わず、引きつけられてしまいます

そういえば、つい最近、原作者のアーシュラ・K・ル・グウィンさんが自己のホームページに、ジブリのアニメに対して、批判的な感想を書いています。
以下は抜粋です。

「全体としては、エキサイティングです。ただしその興奮は暴力に支えられており、原作の精神に大きく背くものだと感じざるをえません」
「原作本から採ったのは固有名詞といくつかの概念だけ、それも文脈を無視して断片を切り取ったのみで、ストーリーはまったく別の統一性も一貫性もないプロットに置き換えました。本だけでなく、読者をも軽視するこのやり方は、疑問に思います」
「現代のファンタジーでは、いわゆる善と悪との戦いにおいて、人を殺すというのが普通の解決法です。わたしの本はそうした戦いを描いてはいませんし、単純化された問いに対して、単純な答えを用意してもいません」

映画(アニメ)と原作本、表現方法の違いはどこまでいっても、違う作品としての評価をしなければならないのでしょう。

私は、まだ、映画を観ていません。
全作読んだ後で、観てみようと思います。



ゲド戦記 1 影との戦い

ゲド戦記 1 影との戦い

  • 作者: アーシュラ・K. ル・グウィン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/04/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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コメント 2

ニライカナイ店主

お久しぶりです。読み始めましたね?外伝まで6巻、がんばってください。
映画は5巻までの登場人物で3巻を中心に再構成していますが、
かなり原作とは異なった内容になっています。別物として見たほうが
いいかもしれませんね。原作者はもともと宮崎父にやってもらいたかったという
こともあり、かなり原作者の息子が間に入ってとりなしたと聞いています。
若い世代の新しい解釈、として映画は作られているように思います。
by ニライカナイ店主 (2006-09-08 08:54) 

YumYum

ニライカナイ店主さん、いらっしゃいませ。
お返事が遅くなりました。

えーと、今、第4巻を読んでいます。
巻により、だいぶ書き方が変わりますね。
それぞれにおもしろいです。
どんどんレビューしていきますよ。
by YumYum (2006-09-16 20:21) 

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