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海外ミステリーを読む(その50) [└ミステリー]

ルース・レンデルの『ロウフィールド館の惨劇』です。
発表年 1977年 (早川書房)

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「ユーニス・パーチマンがカヴァディル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。」

これは、この本の一ページ目、一行目に書かれている言葉です。
これは、この本の内容そのもの、
つまり、犯人とその動機までが、いきなり書かれているわけです。

ミステリ(推理小説)を読むときに、その楽しさを味わうために
最も知らせては(知っては)いけない情報が、いきなり書いてあるわけです。

まあ、もちろん「倒叙」という手法はあるのだけれど、
この場合はかなり趣きを異にしています。

さて、いったいこれから、作者はどう物語を進めて行くのでしょうか。

話は過去に戻ります。
犯人のユーニス・パーチマンの生い立ちから、カヴァディル家に雇われ、最後の殺人になってしまうまでの、数奇な出来事(あるいは平凡な出来事)を積み重ねながら、その心理が動いていく様子が、徐々に徐々に、不気味な不安を絡ませながら綴られていきます。

ここで一つ、大きなポイントが「文盲」ということです。

日本は、文盲率が低く、こうやってBLOGを書いたり読んだりする人、読書をこよなく愛する人には、まったくイメージが沸かないかも知れません。
文字が読めないということ、喋れるけれども書けない、読めない、分からない。
新聞、雑誌はもとより、街に氾濫する看板、案内板、ちょっとした伝言メモにいたるまで、奇妙な抽象画にしか見えない世界。
たとえば、外国語ができなくて、外国に行くとします。
でも、日本語を普通に読み書きしている人なら、経験則から推測したり、辞書を使うという事だってできるわけです。
でも、この作品に出てくる主人公には、総ての文字が、恐怖の文様でしかないようです。

しかし、だからといって、殺人事件にどう結びつくのでしょうか?

ルース・レンデル、
他の作品も読んでみたい人が、またひとり増えました。

PS、この作品はミステリなのでしょうか?



ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

  • 作者: ルース・レンデル
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1984/01
  • メディア: 文庫



タグ:ミステリ
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